赤き皇帝・最期の闘魂伝承

2006年のF1グランプリ、10ポイント差で迎えた今季最終戦シューマッハがチャンピオンになるには、このレースで優勝しライバルのアロンソがポイント圏外でなければならない。…そんなピリピリした雰囲気で始まったブラジルGP。
結果的にはアロンソが2位入賞した事で8ポイント獲得し、逆転でのチャンピオンを狙うシューマッハは猛追叶わずに最期の夢は潰え、アロンソが2年連続のワールドチャンピオンに輝いた。また母国でのGPを戦った同僚のマッサは、堂々とポールトゥフィニッシュで、セナ以来の13年ぶりのブラジル人によるブラジルGP、母国優勝を果たして魅せた。
このブラジルGP、確かにシューマッハの夢は叶わなかったが、その走りでファイティングスピリットを若い世代に伝承出来たのではないだろうか。トラブルを受けても諦めずに猛追する姿勢や「ターミネーター」と呼ばれた頃の走りとは一味違った熱いバトルで、16年間培って維持し続けてきた誇りを示したのではないだろうか。確かに最後まで逆転での勝利を諦めてはいなかっただろうが、それと共にそんな想いも胸に戦っていたに違いない。
過去何人ものパイロット達が様々なカタチでF1の世界から去っていった。別のレースの世界に生き甲斐を見つけた者、夢半ばにして去って行ってしまった者、ある日突然に終了を神に告げられた者…。そんな多くのパイロットに比べると、本当に「幸せな幕切れ」ではないだろうか。最期まで力の限り戦っている姿のまま去っていくのだ。正直、なまじ逆転優勝を果たしワールドチャンピオンを獲得して終わったら、こんなにも清々しい2006年のF1の閉幕はなかったかも知れない。
…うん、これで良かったのだ。あんなに嫌いだった、あんなに憎んだ君に贈ろう、ダンケシェーン!ミハエル。君のスピリットは今回ポディウムに登ったマッサ、アロンソ、バトンらがキッチリと受け取ってくれただろう。
あー、酔っぱらいの戯れ言でした。